2つの香り袋と扇子

香り袋入門 ~ポケットに ひとときの和みを~

  • 2019年8月19日
  • 2020年5月13日
  • アロマ
2つの香り袋と扇子

香り袋をご存じでしょうか?

文字通り、香りを楽しむための小さな袋のことですが、日本に古くから伝わる文化の一つです。

伝統的な天然香料を使った香りは、香水ともアロマオイルとも異なる、何とも言えない奥ゆかしい魅力があります。

今回はそんな香り袋について、歴史から用途まで幅広くご紹介します!

1.香り袋のこと知ってる?

「香り袋ってなぁに?」そんなあなたのために、まずは香り袋について基礎的なことからご紹介します。

1-1.香り袋について

香り袋は、別名・匂い袋。

現在では、ポプリを詰めたサシェのほうが広く知られているかもしれません。

日本に古くから伝わる香り袋は、白檀(びゃくだん)、丁子(ちょうじ)、桂皮(けいひ)など、天然の香料を自分好みに調合し、巾着型の袋に入れて香りを楽しむものです。

手のひらサイズの小さな袋から、自分だけの香りの世界が無限に広がります。

1-2.香り袋の歴史

日本ならではの香りの文化として広まっていった香り袋。

ここでは香り袋の歴史について、簡単にご紹介します。

1-2-1.平安時代

現代の香り袋のルーツは平安時代にまでさかのぼります。

平安時代は、それまで宗教色が強かった香りの文化が、貴族の間で趣味として広がりをみせた時代です。

平安時代の貴族たちは、年に1、2回しかお風呂に入れない代わりに、部屋に薫物(たきもの)をして衣服に香りを移らせた…というエピソードは、多くの方が歴史の授業で習ったことがあるかと思います。

そんななか、まだあまり一般的ではなかった香り袋も「えび香(えびこう)」というかたちで用いられるようになります。

ちなみにこの「えび香」は、小さな巾着袋型ではなく、小籠包というか栗きんとんのような形をしています(笑)。

「源氏物語」に登場する末摘花という女性は、冴えない容姿でしたが、かぐわしい「えび香」の香りをまとったことで源氏の心を射止めたそうです。

平安時代には「えび香」のほか、「薬玉(くすだま)」や「阿梨勒(かりろく)」といった、邪気除けや疫病除けを目的とした室内にかけるタイプの香り袋(掛香)の原型も誕生しています。

1-2-2.江戸時代

江戸時代になると政治の安定に伴って経済が発達し、商人をはじめとした一般大衆にも、香りの文化が一気に広がりました。

女性に香り袋は大人気で、風情ある女性のたしなみとして、「花袋」や「浮世袋」などの名がつけられ、広く流行しました。

香り袋のほか、木製の枕の中に香炉を入れる香枕、着物の袖に忍ばせる袖香炉、現代でも広く使われている線香など、香りを楽しむ多彩なグッズが生み出されたのもこの時代です。

平安時代以降、女子のたしなみとして親しまれてきた香り袋。

歴史にも目を向けると、より親しみが湧いてきますね◎

2.天然香料の紹介

香り袋の特徴は、天然の香料を使用していること。

お香の多くは加熱して使いますが、香り袋は加熱しませんので、常温でも香り、防虫効果が高い香料を選びます。

多くの香原料がありますが、代表的なものは以下の通りです。

・白檀(びゃくだん)
・丁子(ちょうじ)
・桂皮(けいひ)
・大茴香(だいういきょう)
・龍脳(りゅうのう)
・藿香(かっこう)
・山奈(さんな)
・甘松(かんしょう)

これらをブレンドして香りを作ります。

香原料は、香舗というお香の専門店で購入できます。

3.香り袋の使い方あれこれ

香り袋の用途はさまざま。

日常生活にも取り入れやすいよう、手軽な使い方をいくつかご紹介します。

3-1.香りを移す

平安時代では主に衣服に香りを移していたようですが、現代風に、以下のアレンジをご提案します。

3-1-1.名刺から香りが

名刺入れに香りを移しておくと、名刺交換の際に移り香がほのかに香ります。

ビジネスの相手にさりげなく好印象を与える香りの演出です。

3-1-2.バッグ・財布

バッグの中に薄型の匂い袋を入れておくと、開けた時にほのかな香りが楽しめます。

小物にも香りが移る効果も。

財布やに小さな匂いを入れておけば、紙幣や小銭からも移り香が匂い立ちます。

3-1-3.しおり・封筒・便せん

お気に入りの香りを本のしおりに移しておくと、本を開くたびに香りが漂います。

また、封筒や便せんを香り袋と一緒に引き出しにしまっておけば、ほのかな香りが移ります。

受け取る方への思いやりを、香りで表現できますね。

3-2.車内芳香として

車の中は空気がこもりがちで、さまざまな匂いが混ざり合っています。

この狭い空間をさわやかに演出するのが、香り袋です。

気に入った袋であれば飾りにしたり、あるいは目立たないところにそっと置いておくことで、かすかな香りで快適な空間を演出できます。

ただし、狭い空間なので香りは控えめにしましょう。

3-3.香りをまとう

強い香りが禁物な和装時は、小さな香り袋をたもとや懐にしのばせて、奥ゆかしい香りのおしゃれを。

帯揚げなどの小物はタンスの引き出しに香り袋を入れておくと、ほのかな移り香を楽しめます。

また、香り袋を小さなボール状に形作ってヘアゴムにつければ、動くたびにフワッと香るオリジナルのヘアアクセサリーの出来上がり。

シュシュなどの髪飾りも、香り袋と一緒にしまっておくとほんのり香ります。

ここでご紹介した使い方はあくまで一例です。
ご自身に合った使い方で香りを楽しんでみてくださいね。

4.香りの贈り物

ここで、少し趣味の話をさせてください。

「赤目四十八滝心中未遂」という、ライターうりぼうお気に入りの日本映画があります。

その映画のクライマックスで、主人公の男性が、ヒロインに香り袋を渡すシーンがあるのです。

香り袋を渡したあと、ヒロインは兄の借金の肩代わりのために自ら売り飛ばされる道を選び、2人は離れ離れになるという悲しい結末を迎えるのですが…(涙)。

2人の恋の形見のような存在として香り袋が使われており、何回観てもグッと来てしまいます。

香り袋を恋人にプレゼントするって、なんともロマンティックですよね。

香りの贈り物をする習慣は、平安時代から行われていたそうです。

普段香水を使わない方でも、香り袋であればチャレンジしやすいはず。

2人の恋を、香りの力がさらに彩り豊かにしてくれることでしょう。

もちろん恋人に向けたものだけではなく、家族や友人へのお祝いやちょっとしたプレゼントなど、さまざまな場面の贈り物として香り袋はおすすめです。

あなたの伝えたい気持ちを、香りと一緒に届けてみてはいかがでしょうか。

 

★おすすめの香り袋のご紹介★

①山田松香木店 匂袋 巾着(金襴中)

②松栄堂 誰が袖・やっこさん

③松栄堂 匂い袋・花くるま

5.手作りの香り袋

香り袋は手作りする人も少なくありません。
キットを使うことでどなたでも簡単に作ることができるからです。

お気に入りのあなただけの香り、大切な人へ贈る香り!

是非、オリジナルの香り袋作りもチャレンジしてみてください!

 

 

花小袖 手作り匂い袋(手作りキット)

おわりに

日本ならではの奥ゆかしさが魅力の、香り袋についてご紹介しました。

心鎮まるやさしい香りは、あわただしい日常にフワッとひとときの和みをもたらしてくれるはず。

ぜひ、日々の生活に取り入れてみてくださいね。

香り袋をうまく使いこなし、香りたしなみ系女子を目指しましょう★

 

★本記事の参考文献はこちら★

和の香りを楽しむ「お香」入門/山田松香木店/2019年/東京美術

NHK趣味悠々 香りを楽しもう/太田清史/2004年/日本放送出版協会

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